以前、不眠を訴えて向精神薬を処方され、悪化するに至ったMさんの例を紹介した。
Mさんは、更年期障害(不眠、ホットフラッシュ、動悸など)によって病院を受診し、向精神薬(レンドルミン)を処方された。
薬を飲んで寝ると言う生活を続ける中で、しだいに最初の量では効かなくなり、量が増えていくはめになる一方で、動悸やホットフラッシュや不眠はひどくなっていく。
これは向精神薬の副作用によるもので、飲めば飲むほど状態は悪化する。
現に、レンドルミンの医薬品添付文書をみれば、それは明らかになる。
●レンドルミン(ブロチゾラム)
ベンゾジアゼピン系睡眠薬
脳内で神経興奮に関わるベンゾジアゼピン受容体(BZD受容体)を刺激して、脳の活動を抑えることで眠りやすくし、睡眠障害などを改善する薬
<副作用>
だるさ、ふらつき、倦怠感、残眠感、眠気、眩暈、頭痛、頭重感、黄疸、肝機能障害、興奮、呼吸抑制、不穏、もうろう状態、一過性前向性健忘、悪心、悪夢、いらいら感、嘔気、下肢痙攣、過敏症、気分不快、下痢、幻覚、口渇、紅斑、食欲不振、振戦、譫妄、立ちくらみ、尿失禁、発疹、発熱、貧血、不安、不眠、味覚異常、脈拍数増加、薬物依存、離脱症状
・・・だるさ、ふらつき、倦怠感、眩暈、頭痛、頭重感、興奮、呼吸抑制、不穏、いらいら感、嘔気、気分不快、食欲不振、立ちくらみ、不安、不眠、脈拍数増加、薬物依存、離脱症状・・・
まさしく、更年期障害の症状と一致する。しかも、薬物依存や離脱症状(止めようとすると起こる一種の禁断症状)という害まであるから、なかなかやめづらい。
薬などは、根本解決に繋がらないということだ。(もちろん当人にはこのことを告げた。)
不眠については、拙著『クスリにだまされるな!うつより怖いうつ治療』で詳しく書いているので、以下抜粋する。
●睡眠導入剤のリスク
筆者の経験上、人に向精神薬の危険性について話をした際、
「クスリは飲んでいない。飲むのは睡眠導入剤くらい」
「寝れないよりは、睡眠導入剤飲んで寝れた方がいいですよね?」
と、言われることが多い。
どうやら世間的に、その他の向精神薬に比べ、「睡眠導入剤」へのハードルは低いようだ。
以前は「睡眠薬」と呼ばれていたネーミングを「導入剤」へと変えたのも、クスリによる「自殺」「保険金殺人」といった暗いイメージを払拭したい業界の思惑があったのだろう。
ただ、ハードルの低さとは裏腹に、睡眠導入剤もまた向精神薬の一種であり、有害かつ依存性が強い事に変わりはない。
それでも、睡眠というものが人間にとって不可欠とされる欲求であるだけに、
「睡眠不足はボケやすいってテレビで言っていたよ」
「全然眠れないなら、クスリ飲んででも眠れた方が楽だ」
と、いった声が根強い。
だが、通常の睡眠と比較して、睡眠導入剤によって得られた睡眠では本当の意味で脳が休めていない事が分かっている。
睡眠に、レム睡眠・ノンレム睡眠という波があることは知られているが、睡眠導入剤によって得られる睡眠の場合、そうした通常睡眠の波とは異なり、例えるなら、殴られ意識を失ったような状態、全身麻酔で意識を落とした状態にむしろ近い。
眠るというよりは、強制的に意識をシャットダウンさせているようなものなのだ。
クスリによって数時間のシャットダウンがあったとしても、実際に脳は本来の睡眠ができていないため、疲れが取れにくい。
「睡眠導入剤で眠るようにしているけれど、どうにも疲れが取れない気がする」
と、言った声をよく聞くのはそのためである。
「いや、私はクスリによってきちんと眠れているし、満足している」
と、言う人もいるだろうが、そう思っているだけで、体へのダメージは気付かぬうちに蓄積していく。(『睡眠薬中毒』 内海聡著 PHP研究所)
睡眠導入剤が危険な向精神薬の一種であることは、抗うつ剤などと同様に「攻撃性」を増長させるケースが後を絶たないことからも窺い知ることができよう。
海外では、「ハルシオン」(トリアゾラム)という睡眠導入剤が関連した銃撃事件が起こるなど、強い依存性・錯乱性・興奮性が問題視されているが、日本ではいまだ野放し状態だ。
ハルシオンなどの睡眠導入剤や抗不安薬(精神安定剤)の多くは、ベンゾジアゼピン系と呼ばれ、「耐性」「依存性」が強いとされる。
すなわち、使うほどに量を増やさないと効かなくなってくる上、クスリを切らすと「不安・不眠・頭痛・幻覚」などの禁断症状に襲われやすくなるのだ。当然、なかなか止められなくなり、エスカレートしていく。
「ベンゾジアゼピン系の抗不安薬(ジアゼパムなど)は、比較的安全性が高く、依存性もそれほど強くない」
などの情報がネットなどでも流れているが、それがまやかしである事は、これまで述べてきた内容を見れば分かるであろう。
そして、大量服用に陥った結果、正常な判断ができないようになり、大量のクスリを一気飲みして記憶のない状態で暴力や殺人を引き起こす場合がある。
「誰でもよかった」
などと犯行理由を説明する犯人が、精神科への通院歴がある場合、
「精神病だからこんな犯行を起こした」
と、受け取りがちだが、実際は、大量処方されたクスリの副作用により攻撃衝動が増長されてしまったのだ。
近年、睡眠導入剤を服用し、車の運転をして捕まるケースが多発しているが、それもまたクスリの害が絡んでいる。
奇妙な行動を繰り返したり、酒と一緒に飲んで急死したり、自殺に至ることさえある。
イギリスの医学博士デイヴィッド・ヒーリーは、
「日本ではベンゾジアゼピンがまだ使われている。奇妙なことだ」
と、警鐘を鳴らす。(『クスリは飲んではいけない!?』 船瀬俊介著 徳間文庫)(『病院で殺される』 船瀬俊介著 三五館)
そんな中、日本では精神科や心療内科が増え続けている。
精神科や心療内科が増えれば、必然的にクスリの売り上げも上がり、薬物中毒患者も増え続け、精神科への入院患者が以前の倍以上に増えている現実・・・。
だが、凶悪事件の引き金となったはずの向精神薬の影響を指摘した意見書は、裁判で黙殺されることが多々あるらしい。
おそらく、精神医療利権を失いたくない連中が、司法の協力者を作り、国家ぐるみで真相を隠蔽しようとしているのだろう。
睡眠導入剤にはそうした危険性がある上に、その他の向精神薬服用への入り口となっている場合が多い。
例えば、
「なかなか寝付けない日がある」
と、いう旨をかかりつけの医者に訴えると、大抵の医者は、
「クスリを飲んででも眠ったほうがよい」
と、睡眠導入剤を簡単に勧めてくるはずだ。
クスリを飲むようになって、仮に初めは眠れるようになった(本当の意味での睡眠ではない)としても、次第に効き目が薄くなり、量が増えていく。
やがて、副作用によって様々な症状が出てくると、
「これは自律神経失調症ですね」
「うつになる前兆かもしれません」
などと言っては、心療内科への受診を勧められ、抗不安薬(精神安定剤)や抗うつ薬など様々な向精神薬を服用するようになっていく。
元々は、「なかなか寝付けない日がある」というだけの症状であったはずが、いつの間にか、動悸・不安・攻撃衝動・自殺企図・・・などに膨れ上がっていくのだから恐ろしい限りだ。
さらには、市販薬でも「睡眠改善薬」という類のクスリが売られており、
「長期、漫然と使うことに抵抗がなくなった」
「精神科以外でも気楽に処方される」
と、警鐘を鳴らす専門家もいる。(『クスリは飲んではいけない!?』 船瀬俊介著 徳間文庫)
この睡眠改善薬というものは、実はアレルギーのクスリ(ジフェンヒドラミン塩酸塩)、すなわち、「抗ヒスタミン剤」の副作用を利用した代物で、服用すると眠気を催す。
かといって、それが安全であるはずもなく、例えば、「ドリエル」という睡眠改善薬の「使用上の注意」には、
「寝つきが悪い時や眠りが浅い時のみの服用にとどめ、連用しないでください」
などと、書かれていることからも、
「毒性と依存性があり、連続使用は危険だ」
と、いうクスリの有害性を読み取ることができる。
ちなみに、ドリエルの副作用群には、
「発疹、発赤、かゆみ、胃痛、吐き気、嘔吐、食欲不振、めまい、頭痛、起床時の頭重感、昼間の眠気、気分不快、神経過敏、一時的な意識障害(注意力の低下、ねぼけ様症状、判断力の低下、言動の異常等)、動悸、排尿困難、倦怠感、口のかわき、下痢」・・・などが並ぶ。
現代社会は、自然とはかけ離れた環境下にいることが多くなり、人間関係や利害関係に苦しみ、ストレスを抱えて不眠を訴える人が増えている。
昨今、心療内科が増えてきているのは、そうした背景を踏まえてのことだ。
ただ、ほとんどの医者にとって、患者とは経営のための客(金づる)であり、商売の原則としてリピートを求める傾向にある。
リピート客が増えるほど、経営は安定しやすいからだ。
それには、副作用リスクがあり依存性の高い向精神薬はうってつけであり、一度クスリを処方してしまえば、ほとんどのケースで生涯顧客となる確率が高い。
中には善意の精神科医・心療内科医が存在することを願いたいところだが、どれほど善良な人柄であっても、向精神薬を少量でも処方するような医者は、
「患者のため」
「できるだけクスリを使わない方法で」
と、言いながら、長期的に見れば結局は患者をクスリ漬けにしてしまうだけの存在に過ぎない。
もちろん、断薬のために段階的にクスリを減らしていく場合は、やむなく処方する必要があるが、問題はその医者が最終的にクスリをゼロにまで持っていこうとしているかどうかなのだ。(患者にとって、このあたりの見極めは難しいだろう。というより、真の断薬に協力してくれる医者の割合は、本当に少ないと思う。)
以前に比べ、クスリが少量になる事は患者にとって喜ばしいことだろうが、
「一生、付き合っていくしかない」
と、少量・単剤服用の必要性を勧めてくる医者は、本当の意味でクスリの恐ろしさを分かっていない。(分かっていて勧めるならそれは偽善者以外の何者でもない。)
とはいえ、
「この患者は、重度の薬物中毒であり、完全にゼロにするのは難しいのだ」
と、いう場合もあるだろう。
ただ、たとえ結果的に、薬物中毒患者がクスリをゼロにする事が叶わないケースであったにしても、飲ませ続けること自体を既定路線にしてしまってはいけないと言っているのだ。
「クスリを飲んで、病気とうまく付き合っていくしかない」
こうした考えが、患者のみならず、医者の間でも蔓延しているあたりに、医療業界の闇がある。
そもそも、
「眠れなければ脳によくない。呆けやすくなる」
と、いう意見についても、睡眠導入剤を飲み続ける事の方がよほど脳へのダメージがあると私は思っている。
まずは、
「夜は眠らなければならない」
「夜に眠れないのは病気かもしれない」
と、いう「思い込み」を捨てることだ。
「一日△時間寝ないとだめだ」
「朝の□時までは寝たい」
と、思っていると、それが満たされなければ苦痛が残る。
ある実験で、264時間(11日)全く眠らなくても死ななかったというデータもある。(『睡眠薬中毒』 内海聡著 PHP研究所)
これは極端な例だが、どうやら数日間眠れない程度で死ぬという事はほとんどなさそうだ。
「いや、私は全く眠れない」
と、言う人であっても、完全に11日間眠れずにいるという人はまずほとんどいないだろう。気が付けばウトウトと眠ってしまっていて気づかない事はあったとしても。
少々乱暴に聞こえるだろうが、
「眠れないならば、眠れるまで放っておいてもいい」
と、まずは思ってみることだ。
人間、脳や体が疲れてくれば、休息するようにできている。
むしろ、自らの観念が自らを縛り、苦痛を生み出しているのだ。(かえって偽りの睡眠をクスリで得ようとするほど、だんだんと状態が悪くなる。)
どうしても寝ていたい人は、横になって目を閉じているだけでも疲れは回復する。
夜に眠れないと悩んでいる人でも、自分で気づかぬうちに、昼間いつの間にかウトウト眠っているケースも多い。
人それぞれ時間の過ごし方はあるだろうが、退屈な映画を見たり、興味のない字ばかりの本を読んだり、音楽を聴いたりしているうちに寝てしまうこともある。
「やりたいことをやれる時間が増えた」
と、捉えて、これまでできなかった事を楽しむのもいいだろう。
もしかすると、眠れないのは環境のせいかもしれない。
一人暮らしで寂しいなら考え事も増えるだろう。年を取ると目が覚めやすくなったという人も多い。仕事で張りつめていたり、ストレスが多いと興奮がなかなか収まらない。
そうなれば、眠れないのはごくごく自然な反応であり、それを、
「私は異常だ」
「病気だ」
と、考えるから、話がますますややこしくなるのだ。
運動をしていないなら、体を動かせば必ず疲労はたまる。
頭を使っていないなら、何かしらの勉強をしてみたり、本を読んでみたりする。
逆に、仕事などで神経が高ぶっている場合は、リラックスする方法を模索してみる。
アロマ、お香、お風呂、音楽、スポーツ観戦、読書、ハーブティー・・・など、人それぞれの好みに合わせてやってみることだ。
自律神経を調整するセラピーや体操などもいいだろう。
何より重要なのは、眠れないと訴えている人に限って、食べ過ぎているケースが多々ある事だ。
甘いもの、スナック菓子、お茶菓子などの間食をはじめ、日常生活の食事に偏りや量の多さが目立つ。
食べ過ぎる事で胃腸に負担がかかり過ぎると、東洋医学でいう「脾」が弱り、相対的に「肝気」が高ぶってしまったり、「肝血」や「心血」が不足してしまったりする場合がある。すると不眠が生じやすくなる。
例えば、ストレスによって多量に食べてしまう(ストレス食い)人がいた場合、胃腸に負担をかけてしまうことでさらに体がだるくなり気の高ぶりが増すという悪循環を生む。
ストレスをなかなか減らせない人は、まず食の在り方を変えると、改善への一歩を踏み出しやすい。
そうした場合、ファスティング(断食)が有効となる。
食を減らすと、睡眠時間が短くなりやすいことはよく知られている。
少食の人にショートスリーパーが多いのはそのためだ。
彼らは、食を少なくすることで、体が軽くなり、頭が冴えてくる事を知っている。体が疲れないので、睡眠時間が短くても、全く苦にならない。
むしろ集中力が増すし、デトックスも進む。(※食べないと、胃腸へ血液を送る必要がないため、体のエネルギーを他の事に使える。)
実際、私も少食にした際、今までは7・8時間眠らないとすっきりしなかったのに、1日1食や2食を続けていくと、4・5時間で目が覚め、しかもすっきりしているという感覚を体験した。
食事や睡眠の時間が減り、その空いた時間を好きなことに使え、しかも集中力が増すため、仕事や趣味が充実できるようになった。
ストレスが高じすぎて自律神経の乱れが生じ、緊張のスイッチが入ったままになってしまっても、日常の在り方を見つめなおして原因を改善したり、東洋医学などのセラピーの助けを借りたりすれば平衡を取り戻せるわけで、わざわざ病院に行って、有害な睡眠導入剤をもらう必要はないのだ。
自ら考える事よりも、真実に蓋をし、
「医者にお任せの方が安心」
「いいクスリはないか」
と、なりがちな依存的性格の人は、心の拠り所を求めているのだろうが、その依存する相手が医者でありクスリである以上、待ち構えているのは悲劇しかない。
●参照記事:「向精神薬の減薬・断薬」
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