鍼をする場合としない場合があるのはなぜですか?

当院で基本となる考え方は、

「患者様にとって最も最短距離で改善に向かうサポートをするには、何を用いればいいか」

です。

 

手技や鍼灸を状況に応じて使い分け、治癒力を引き出すための施術を行いますので、鍼を使用しないこともありますし、使用した方がよいと判断すれば使用します。もちろん、患者様の意思を尊重した上でですが。

 

そもそも、世間的な印象や多くの鍼灸師・医療従事者にとっての鍼灸とは、どういうものかを挙げてみると、

・深い場所の筋肉にまで届くので、物理的刺激で筋肉を緩めることが出来る

・電気鍼を使用することで、筋肉に持続的な刺激を与えることが出来る

・筋緊張を物理的にほぐすのに役立つ

・美容鍼などもメニューに取り入れている院が増えていて注目されている

・肩こり腰痛など、ほぐしてほしいところを直接刺激できる

などがあると思われます。

 

ただ、元来の鍼灸とは、「気を巡らせる」ためのものです。

古典『霊枢』にも、次のように書いてあります。

「欲以微鍼 通其経脈 調其血気」

要約すると、

「ごくわずかな刺激の鍼を用いて、滞った経脈の不通を通じ、乱れた気血の巡りを調える」

これが鍼を用いる治療の極意だと言うわけです。

 

おそらくほとんどの人にとっては、

「気を巡らせるなんて怪しい」

「気なんてそもそもあるわけない」

「気とか言っているが、要するに血流や神経伝達のことでしょ。たとえ話として聞いといたらいいんじゃないの」

などの印象しか持っていないでしょう。

実際、肝心の鍼灸師たちのほとんどが、そのようなスタンスでしか鍼灸を捉えていないことを私は見てきました。

 

しかし、私はエネルギー療法という治療法を会得したことで、本当に気を巡らせることで痛みを取り去ったり治したりできることを体感しました。

そして、鍼は気を巡らせるための最良の手段の一つであることも理解できました。

 

これは実際にやってみないと分からないかもしれません。治療家も患者さんにとっても。

 

例えば、肩の挙上で痛みを感じる患者さんがいたとしたら、痛みを感じる時に読み取れる身体の反応(肺にマイナス波動を感じる)があれば、その反応を感じた状態で頭の共鳴点を探り鍼を入れる(コツがあります)と、肩の痛みがその場で消失する・・・といった具合です。

 

このような現象を私は臨床現場で数え切れないほど体験してきました。

もちろん、鍼を使用しなくても、お灸でもいいし、手でやることもできます。

 

鍼を用いる利点としては、しばらく置鍼しておくことで気を長く入れることが出来たり、複数の鍼を同時に使用することで気を入れる入口を複数作れることです。

お灸よりも鍼の方が気の入るスピードが速く、即効性も出やすいと感じます。

 

その後、より早く気を入れる技術(主に手を用いる)を会得したため、鍼を用いるケースは以前より減りましたが、有効な方法であることに変わりはありません。

 

例えるなら、鍼を使用していた時は大砲で言う「射角計算」をして射角を合わせて一つずつ撃っていたものが、新たな方法では「ノーモーション」で次々と弾を撃てるという感じでしょうか。

 

私が鍼を用いる場合は、エネルギー療法と組み合わせて使用することになりますが、主に、頭などに共鳴点を探し置鍼する「頭鍼」や、中医学の穴性を活用した「一本鍼」を状況に合わせて用いるといった具合です。

お灸も同じ考えですが、寒熱の冷え傾向の場合や、逆子の灸で用いることになります。

 

気を巡らせるというスタンスにおいて考えれば、鍼はあってもなくてもいいのです。

無刀ならぬ無鍼でしょうか。

たとえ鍼を用いていなくても、鍼灸師として、気を巡らせる目的を達することができるのであれば、鍼を用いるか用いないかにこだわる必要はなく、手で気を巡らせたとしても鍼灸の真髄を込めて行っていると言えるでしょう。(微鍼どころか無鍼)

 

このあたりの事が分からない医療従事者が多い為、鍼を刺すかどうかにこだわる人や、鍼と言えば深層筋刺激、整体と言えばマッサージ的なことをするイメージしかない人が多くて、たまに話をした時に説明するのも面倒なことさえありますが(笑)。

 

逍遥堂